『ミックス依頼用、データ作成ガイド』頭合わせからラフミックスまで

さて、楽曲が出来上がりミックスを自分以外の人へ依頼したい場合に

  • 依頼用のデータってどう作成すればいいの?
  • どんなデータが必要なの?
  • 必要な情報って何?

と様々な疑問があると思います。

今日はそれらを解決して、スムーズにデータを共有するための方法を解説していきます。

なぜデータの準備が大切なのか

ミックスの依頼をする際に、正確に整理されたデータが届くかどうかで、作業効率もさることながら、音の仕上がりに影響の出る事もあります。

大事な作業になりますので順を追ってチェックしていきましょう。

ファイル書き出し時の注意事項

1、プラグインやフェーダー、パンの設定について

まず、プラグインに関して、例えばドラムのKickの音にEQをかけていて、そのEQが気にっている場合や、

ブレイク部分のボーカルに場面転換でディレイをかけていて、それが音として楽曲の中で大切な役割を担っている場合など

意図して作成した音やトラックに関しては、エフェクト有りと無しの2パターンのファイルをお送りください。

意図して作成した音の再現がこちらでは難しい場合はそのままエフェクト有りのファイルを使用し

改めて作り直した方が作品として良い感じになる場合は、エフェクト無しのファイルを使用して作り直しを行います。

それ以外の、特に思い入れのないエフェクトに関しては外した状態でファイル作成を行います。

次にフェーダーの位置ですが、基本は0の位置に戻します。

パンに関しては、基本はセンターに戻します。

ただ、ミックスに定位を反映させたい場合は、後述のラフミックスをお送りいただくか、定位の情報を書いてお送りください。

この時点で曲を再生した際に、各トラックのメーターが赤(オーバーロード)していないかも確認して、

赤がついている状態でしたら点灯しないように下げて書き出す必要があります。

2、頭合わせでの書き出し

例えば、ドラムは3小節目、ボーカルが11小節目から始まる曲があったとします。

これをそのまま、ドラムは3小節目、ボーカルを11小節目からファイル作成して相手へ送ると

送られた側がDAWにインポートした際に、ドラムはドラムは3小節目、ボーカルが11小節目にマニュアルで合わせる必要が出てきてしまいます。

また、送った側もドラムは3小節目でボーカルが11小節目だよ、って伝える必要があります。

それを、書き出しを行う時点で『ドラムもボーカルも1小節目』からファイル作成しておけば

ファイルをもらった側も合わせる必要がなくなり、送った側も相手に各トラックのスタート位置を伝える必要がなくなります。

このWinWinな関係を『頭合わせの書き出し』なんて言い方をしています。

要は、全てのトラックの頭を揃えて書き出しを行う、ということになります。(無音部分も含めて書き出しを行う、という事ですね。)

不安な人は、『全てのトラックを無音部分含め1小節目から書き出す』と覚えておきましょう。

3、ファイル名について

それぞれのトラックにわかりやすい名前をつけておきましょう。

例えば

スネア:Snare、Sna、Sn

ボーカル:Vocal、Vo、Vox

などの様に、半角の英数字でまとめるようにします。

2バイト文字(日本語や全角文字)は今でこそある程度は問題はなくなって来ている部分はありますが、

やはり文字化け等のトラブル防止という観点から使用しない方が無難です。

4、ファイル形式について

ファイル形式はWAVやAIFFなどの非圧縮データが基本です。

MP3やAACなどの圧縮データでも可能ですが、WAVをわざわざMP3にする必要はありません。

WAV >MP3

と覚えておいて下さい。

またMP3しかない場合にWAVに変換(コンバート)しても音質が良くなるわけではありません。

また、サンプリングレートとビットデプスに関しては録音と同じ状態(現在と同じ状態)でお送りください。

例えば録音が44.1kHzだったのに、書き出し時に48kHzで書き出して送っても音は良くなりません。

ラフミックスの作成

ラフミックス=粗いミックス

即ち、しっかりとミックスを行った音源ではなく、簡単にざっくりと、必要なミックスを施した音源になります。

例えばドラムの録音を行った日があるとします。

その日の終了時に、家でプレイを確認したいから、その為の音源をラフでちょうだい!みたいな事があります。

するとドラムのプレイが確認しやすいように、他の楽器よりも気持ち大きめの音量でミックスしてファイル作成を行います。

簡単にざっくりと、必要なミックス(ドラムを気持ちあげた、確認用の音源)を作成する、という具合ですね。

同様に、ミックスを依頼する場合も、依頼相手に対して楽曲の現状を伝えたい場合があります。

その手段としてラフミックスを作成するという事です。

例えばアコギは左に置きたい、エレキギターは右に置きたい、などのパン情報含め、楽器のボリューム感やエフェクトなどの具体的な要望などあれば

それらも反映してラフミックスを作成すると伝わりやすくなります。

ラフミックスという名前ではありますが、実際はとても大切な音源になります。

まとめ

さて、今日はミックス依頼用のデータ作成の流れを見ていきました。

一つ一つの小さな積み重ねが良い音、良い音楽に繋がっていきます。

少々細かな作業で面倒ではありますが、良い作品に仕上げるための大切なプロセスなのでしっかりとやっていきましょう。

また、swaying needlesではお見積もり時のデータ確認の際に、お送りいただいたデータに問題がないか、データチェックを行っております。

お見積もりはもちろん無料で行っていますので、お気軽にお問合せ下さい!

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「初めてのミックス依頼ガイド」失敗しないためのポイント5選

宅録や「歌ってみた」など、自宅で録音した音源を公開する人が年々増えています。
また、近年ではAIを使用して作曲を行う人も増えてきており、色々と議論されていますが、着実にツールの1つとして認知され始めています。

その中で 「もっとクオリティを上げたいから、プロにミックスをお願いしてみたい」 と思ったことはありませんか?

ただ、いざ依頼しようと思っても、

  • プロへの依頼はどんな準備が必要?
  • どんなことを伝えればいい?
  • 相場はいくらくらい?

と不安が尽きないのが実情です。

そこで本記事では、20年以上の現場経験を持つエンジニアが、

初めてでも安心してミックス依頼ができるようになる5つのポイント を解説します。

(多くはクライアントの方々にご協力頂きたい内容となっています。より良い作品に仕上げるため必要な内容となっていますのでご一読ください!)

 

 

はじめに、ミックスとは?マスタリングとの違いや基本を理解しよう

『ミックス』とは、複数のトラックに分かれた楽器や音声の録音データ(ボーカル、ギター、ドラムなど)を、
音量バランス・定位・音質を調整してステレオの音声ファイル(2mix、トゥーミックス)にまとめる工程です。

(Dolby Atmosの場合はAtoms Mixなんて言い方をしています)

ともかく、複数の音をまとめる作業のことをミックスと呼んでいるわけですね。

そのまとめる際に何をしているのかと言うと、楽器や音声の『音量』『音質』『定位』のバランス調整を行って音楽となるようにまとめるわけです。

一方『マスタリング』はミックスでまとめた音声ファイル(2mix)に対して、楽曲全体の音量、質感の最終調整を行い、配信やCD等の媒体に適した形へと仕上げる作業のことを言います。

時々混同されている方もいるのですが、内容としてはこのような大きな違いがあります。

  • ミックス → 楽器や音声のバランスを整え、まとめる。
  • マスタリング → ミックスでまとめた音声ファイル(2mix)に対して、音量質感の最終調整を行い、配信やCDに適した形へと仕上げる。

この違いを理解しておくと、依頼の際に「どの時点でどの依頼ができるか」が明確になります。

例えば、マスタリング時に細かな音量バランス調整(Aメロの歌をあげてください!)などご依頼いただく事もありますが、
基本的には、マスタリング時に「出来ないこと」になりますので、制作工程を理解しておくことが大切です。

(AIでSTEM化して歌の上げ下げできるじゃないか!という話は音質面でなし、と言うことで。)

ではミックスとマスタリングの違いや基本を理解した上で、次に実際にミックスを依頼する際に失敗しないための5つのポイントを見ていきましょう。

 

失敗しないための5つのポイント

  1. 録音データの準備をしっかりと、綿密に
  2. 完成の希望イメージを、できる限り正確に伝える
  3. 納期と修正回数を確認する
  4. 料金の確認、相場や仕上がりの違いを知る
  5. エンジニアの実績やサンプルを確認する

1. 録音データの準備をしっかりと、綿密に。

よく勘違いされてしまうのですが、エンジニアは音に対して何でもできる訳ではなくて、「やれること」と「やれないこと」があります。

AI等の技術の進化で、やれることは一昔前よりも増えてはきましたが、それでもまだ音質面を考慮するとやれないこと、やらないことも多いです。

例えば、お送り頂くデータ自体が歪んでいたり、ノイズだらけだと仕上がりにも影響を及ぼします。

依頼前に以下を確認しましょう:

  • 書き出し時に音がクリップ(赤ランプが点灯)していないか?→不要な歪みは無くす。(これは録音時も同様)
  • 音声に不要なノイズ(雑音やクリック音)が混ざっていないか?→不要なノイズは予めカットしておく。
  • ボーカルや楽器の空間系エフェクトは「エフェクトなし」のドライ音源を用意する。→ミックス時にエフェクトがかかっているとやりづらい事があります。

また、エフェクトに関して、楽器やボーカルのキャラクター作りとしての大きな役割を担っている場合は、
エフェクトありの音源も同時に送って頂けると、楽曲の方向性の疎通に繋がります。

加えて、楽曲データの送付時に、楽曲の情報として

  • タイトル
  • テンポ(BPM)、テンポチェンジや変拍子に関して
  • 歌詞テキスト

これらも共有頂けると助かります。


2. 完成の希望イメージをできる限り正確に伝える

2回目以降の依頼なら全然ありなのですが、例えば初回の依頼で「いい感じにしてください!」だけですと、エンジニアは迷ってしまいます。

『いい感じ』の観点が人によって異なるからですね。

どのように仕上げるか、方向性を明確にするために、 参考曲 ラフミックス を用意すると方向性がわかりやすくなります。

言葉も大切ですが、音で提示して頂けると更に伝わりやすくなります。

また、ラフミックスとは、録音が完了した段階でざっくりと作品の方向性がわかるようにミックスを行った音源のことを言います。

例えば定位や音の質感など、本チャンのミックスでも同じにしたい場合は作成してご共有ください。

言葉でイメージをご共有いただく際も「ボーカルは目の前で歌っている印象で」「低音はタイトに」「広めのライブ感を出したい」など、
具体的にお伝え頂くと伝わります。

エンジニアは 依頼者のイメージを形にする役割 なので、方向性や完成形のイメージの擦り合わせはとても大切になります。

意思の疎通ができた時点で初めて、エンジニアの技術力が最大限に生かされます。

と、色々と書きましたが、あまりわからないので『おまかせで!』でも全然OKです。

その場合は一任したと解釈して、経験を生かし、私の感性で一番良いと思える形で仕上げさせて頂きます。


3. 納期と修正回数を確認する

依頼する前に、作品のリリースに合わせて「納期」と「修正回数」をしっかり確認しましょう。

オンラインミキシングの場合、クライアント立ち合いのミキシングと異なり、スタジオに集って一斉に確認、と言うスタイルではないため

修正回数を設けている場合が多いです。

  • 修正回数が無制限なのか、回数が決まっているのか(無料、有料も含め)
  • 無料修正回数を超えた時の追加修正の料金はいくらかかるのか
  • 納品まで何日程度かかるのか

これを把握しておくだけで、後のトラブルを大きく減らせます。

動画での配信を行う場合は動画制作者とのスケジューリングも同時に行う必要があります。


4. 料金の確認、相場や仕上がりの違いを知る

ミックス料金は幅が広く、1曲 数千円〜十万円以上までさまざまです。

ココナラやSNS等で活動されている方で、1曲数千円でミックスをやられている方もいるようですが、大切なことは

価格と質は比例する部分と、比例しない部分がある

ということです。

まず比例する部分に関して、先ほどミックスとは?の部分でも触れましたが、ミックスは音楽として仕上げる作業のことを言います。

その際に作品の完成に違いが生まれる要因として大きく以下の3つに分けられます

1、ミックスの工程

2、使用機材の質

3、エンジニア自身の経験、感性

経験豊富で良い機材を持っているエンジニアに依頼することで、良いバランス、良い音で仕上げてもらえる予想ができます。

またプロとして活動しているエンジニアは片手間のエンジニアに比べ、作品に費やす時間も多くなります。

時間をかける=いいミックスができる

という構図は、音楽という観点では全く成り立ちませんが、時間をかけないと疎かなミックスになる可能性は大いにあります。いわゆる手抜きですね。

ミックスを仕上げる工程に関してはエンジニアによって違いますが、最悪の場合、必要最低限の工程もわからずにミックスを行う事もできちゃいますので

現場経験を積んだプロに依頼することはメリットがあります。

次に比例しない部分ですが、感性の部分です。

感性は人それぞれ違うため、当たり前ですが、プロのエンジニアでも多種多様です。

その面で「高ければいい仕上がりになる」ではなく、自分のジャンルや目的に合ったエンジニアを選ぶことが大切です。



5. エンジニアの実績やサンプルを確認する

上記の流れで高ければいい仕上がりになるとは限らないので、エンジニアの過去実績やサンプル音源を確認しましょう。

  • 自分の音楽と相性が合うか(ジャンルの一致)
  • 実際に聴いて「好きだ」と思えるか(音質の一致)
  • 信頼して任せることができそうか(性格面)

技術はもちろんですが、「自分が好きな音」「自分が信頼できそうな人」に依頼することが大切です。


よくある失敗例

  • イメージと全然違う作品に仕上がった
  • エンジニアが『できない』の一点張りで修正に応じてくれなかった
  • 修正回数が多くなり追加料金が増えてトラブルになった
  • エンジニアと突然連絡が取れなくなった(SNSで多いと聞きます)

これらは依頼前にしっかり準備と確認をしておけば防げることですが、特に2つ目のできないの一点張りの話はよく聞きます。

私も先ほど、なんでもできるわけではない、と書きましたが、少なくとも物理的、技術的な面で無理なこと以外は、全てできることです。

エンジニアの私的感情が入った『できない』の話を聞く度に、

エンジニアの存在意義である『クライアントの音楽の質を高めて表現のサポートを行う』という部分を見失っているな、、、

と感じてしまいます。

あくまでもエンジニアは音楽の共同制作者であり、クライアントのイメージにできる限り近づけるのがエンジニアの仕事だと考えています。


プロに依頼するメリット

  • 完成度UP:SNSや配信で聴かれたときの印象が変わる
  • 相乗効果による期待:他の人がミックスを行うことで、自分ではできなかったアイデアが発見ができる
  • 時間の節約:自分で何時間も悩むより、プロに任せる方が早い
  • 長期的な価値:継続して同じエンジニアに依頼することで、自分の音楽の個性が育ち洗練される

音楽活動を継続して行う場合、プロに依頼することは大きな投資になります。


まとめ

初めてミックスを依頼するときは、以下の5つを確認しておきましょう。

  1. 録音データの準備をしっかりと、綿密に
  2. 完成の希望イメージを、できる限り正確に伝える
  3. 納期と修正回数を確認する
  4. 料金の確認、相場や仕上がりの違いを知る
  5. エンジニアの実績やサンプルを確認する

依頼前にこれを押さえておくだけで、安心してプロに任せられます。

あなたの音楽をより魅力的に仕上げるために、ぜひプロの力を活用してください。

また、実際に依頼したい方向け『ミックス依頼用、データ作成ガイド』もご用意していますので、ご一読ください。

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