ラウドネス値だけじゃ決まらない。『数値は目安、耳で仕上げるミックスの基準』

① 数値は必要、しかし、、、。

今回は数値に対する考え方の話です。

ミックスをやっていると、さまざまな数値に出くわします。

ラウドネスメーター上の数値、True Peak値、コンプのリダクション値、
EQにおける周波数、VUメータの数値、ゲインステージングの際の数値など。

これらの意味を理解することは重要です。
そして、時には基準となる数値が必要な場合もあります。

しかし、それらを理解していてもミックスが「良く聴こえるかどうか」は別問題。
数値を合わせても、微妙なミックスは存在します。

なぜ数値は目安でしかないのか、順を追って見ていきましょう。


② なぜ数値だけでは決まらないのか

まず数値とは何か。

例えばラウドネス値。
これらは聴感上の音量を数値化したもので、音量の『状態』を表しています。

従って、良し悪しを示しているのではなく、音量の『状態』を示しているだけ、ということです。
他の数値に関しても同様で、数値が表しているのは、あくまでも『状態』です。

一方、ミックスは、楽器や音声の『関係性』で成立しています。
そのため、状態を表す『数値』では推し量ることができません。
ミックスは、その『関係性』の『バランス』の良し悪しで決定されます。


③ では何を基準にしているのか

では、その『バランス』に関して、何を基準に判断しているか。

私の判断基準は下記の通りです。

  1. 主役の見せ方が明確か
    → これは、その音源がアーティストイメージと一致しているか、という点も含めて、根幹となる部分です。
    ソロアーティストの場合は歌い手の顔が前面に見えるバランス、
    バンドの場合は楽器隊との適切なバランスが理想です。
  2. 展開の移り変わりが自然か、世界観作りが適切か
    → Aメロ→サビなどの展開で、盛り上がりや世界観が意図通り伝わっているか。
  3. 情報量が整理されているか
    → 各展開での音の密度や空間の占有具合が適切か。
  4. 聴き続けられるか
    → 周波数の過多やピーク、バランスの悪さで疲労感が出ないか。
    何度聞いても飽きず、聴きたいと思えるかも重要です。

④ ミックスでの判断順序

次にミックスでの判断の順序(ミックスの流れ)を見ていきます。

  1. 音量バランス、不要な帯域の削減、足りない帯域の補強
  2. 展開の確認、世界観作り
  3. 立体感、音の密度や占有具合の確認
  4. ミックス自体の質感
  5. ラウドネス確認

※これは流れの目安であり、実際には何度も行き来しながら微調整を行い判断します。


⑤ 数値との付き合い方

数値自体が示している内容は無視できません。

しかし、囚われすぎる必要もありません。

あくまで道具として扱うことが大切です。

数値は

  • 最終確認
  • 事故防止
  • プラットフォーム対策

のために確認します。

数値は、目的ではなく手段として、耳で判断する基準の補助に使う、これが正しい付き合い方です。


 

ラウドネス値やピーク値などの数値は、確かに重要な目安ですが、
ミックスの良し悪しを決めるのは、あくまで耳と判断力です。

数値は安心して納品できる状態を作るための道具
それを踏まえて、作品全体のバランスや関係性を耳で確認し、最終的な判断を下すことが、
良いミックスへの第一歩です。

数値は目安、耳と判断力でミックスを創り上げる。
この理解があれば、規定に準じた作品づくりと、クリエイティブな判断の両立が可能になります。