ミックスで迷う瞬間|“どこまで残すか”の話

① 迷いはこういう瞬間に生まれる

さて、今回は少し趣向を変えて、ミックス時の「迷い」について考えてみたいと思います。

先日のミックスでも感じたのですが、

ボーカルのローを抑えてスッキリさせることで抜けは良くなる一方、歌の感情が薄れてしまうように感じることがあります。

ボーカル処理をしていると、こうした感覚に覚えのある方も多いのではないでしょうか。

言語や性別、声質によっても加減は変わるため、最適なポイントを探っているうちに迷いが生じます。

また、

トータルコンプで全体を安定させることで曲としてのまとまりは出るものの、パワーや躍動感が失われたように感じることもあります。

目的に沿って調整を行ったはずなのに、大事にしたかった部分まで削ってしまったように思える瞬間です。


② 正解はいつも一つじゃない

これらはどちらも、明確な目的があって行う処理です。

しかし、その結果として“その曲らしさ”が薄れてしまったと感じたとき、迷いとして現れます。

曲や歌、目指す方向性によって選ぶべき答えは変わります。

だからこそ、正解は決して一つではありません。

(方向性については、以前の記事でも触れています。→こちらからどうぞ


③ 音を整えるということ

音は整えることで、より綺麗で聴きやすい方向に向かいます。

けれど私は、昔から少し荒さや雑味が残っている音の方が好きです。

ミックスは「整えること」だと思われがちですが、実際は整える部分と残す部分、そのバランスを取る作業だと感じています。

整えすぎて音楽がつまらなくなってしまうのは、本末転倒です。

ただしそれは、どちらが良い・悪いという話ではなく、感じ方の違いにすぎません。

迷いが生じたときは、まず方向性と照らし合わせます。

それでも決めきれないときは、最終的に“心が動く方”を選びます。

私にとって「心が動く」とは、

  • ダイナミクスと距離感
  • 歌唱表現と質感
  • フレーズと音色

こうした複数の要素が自然に噛み合ったときに感じる感覚です。

迷いは、楽曲の可能性を広げるための大切なプロセスだと思っています。


④ まとめ

ミックスにおいて方向性は重要なゴールです。

けれど、それを意識しながらも楽曲の可能性を探り続けることで、思いがけない良い結果に辿り着くことがあります。

それは偶然に近い形で訪れることもあるため、私はあえて“余白”を残すようにしています。

自分の経験や技術だけでは辿り着けないような瞬間も含めて、ミックスを楽しむこと。

その先にこそ、人がミックスする意味やオリジナリティが見えてくるのだと思っています。

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