今回は、クライアントからミックス用のデータが届いた際に、まず最初にチェックしている3つのポイントについて話していきたいと思います。
ミックスで行う作業は多岐に渡るため、まずは楽曲全体の整理を行うことがとても重要です。
全体像を把握し、どのような処理が必要かを明確にした上でミックスを始める方が、結果的に合理的だと感じています。
よく「ミックスは料理に似ている」と形容されますが、プロの美味しい料理ほど、良い素材に対して丁寧な下ごしらえが行われているものです。
それと同様に、音素材に対して丁寧な下準備を行うことで、ミックスそのものの完成度は大きく変わると感じています。
さらに、下準備と同時に思考の整理を行っておくことで、実際のミックス作業により集中できるようになります。
今回は、その「ミックス前の下ごしらえ」の前編として、思考の整理や手順についての話になります。
私の場合、データが届き、音声素材がセッションに並んだ状態になったら、まず最初にラフミックスを聴きます。
ラフミックスは、制作の中で積み上げられてきた現時点での最終音源です。
その音源を確認しながら、完成形のイメージを頭の中に作っていきます。
具体的には、以下の3点を確認します。
- ジャンル面での方向性
- 楽曲の展開ごとの変化
- パンニングや空間調整を行った後の、全体の音像のイメージ
これら3点を明確にするために、ラフミックスを確認します。
ただし、楽曲の第一印象を大切にしたいので、何度も聴き込むことはしません。
多くても3回ほどで、楽曲の分析とイメージ化を行います。
1. ジャンル面での方向性
音源を世にリリースするという意味で、ジャンルの区別は重要だと考えています。
また、ジャンルによってリズム、メロディー、ハーモニー、コード楽器などのバランス感は大きく変わります。
そのため、まず一聴してジャンルを判断しておくことは、ミックスを進める上でも重要なポイントになります。
2. 楽曲の展開ごとの変化
これは、楽曲の流れの中で、どの楽器や音声が主役になっているかを把握しておく、という意味です。
あわせて、それぞれの場面でどのような世界観を作る必要があるかも整理しておきます。
ミックスで楽曲全体のダイナミクスを最大限表現できるよう、
曲の流れを確認しながらイメージを膨らませていきます。
3. パンニング・空間調整後の全体の音像イメージ
次に、より具体的に楽曲の音像をイメージしていきます。
各楽器のパンニング、リバーブの種類や加減、ディレイの有無、
リードのステレオ感など、楽曲の基盤となる部分から決めていきます。
ラフミックスを確認し、これら3点の答えが見えてきたら、
次にそのイメージが実際に再現可能かどうかを、パラデータと照らし合わせて確認します。
その際、ざっくりとフェーダーで音量バランスを整え、
必要に応じてEQ処理も済ませていきます。
このパラデータ確認の段階で、トラックの分け方やエフェクト構成によって
完成イメージを崩してしまいそうな場合は、クライアントに相談することもあります。
作品のイメージをすり合わせたり、必要であれば変更をお願いすることもあります。
ここまでの流れで、完成イメージの70%ほどが固まったら、
一度1日置いてから本格的なミックス作業に入ります。
残りの30%は、全体の音像調整や、
ミックス中に生まれる偶然のアイデアのために、あえて余白として残しておきます。
実際のミックスでは、やってみて初めて分かることも多くあります。
また、音楽は聴くタイミングによって表情が変わるものです。
その中で生まれる「偶然性」も、私は大切にしています。
